起業や副業・社内起業など、新しい働き方をしている人たちの実例を紹介するインタビュー企画。第2回は、過去の職務経験と中学生時代からの趣味を活かし、来年夏の起業をめざして現在準備を進めている専業主婦、森本志織さん(35歳)を紹介します。
 

自身もセミプロの打楽器奏者

――今のお仕事を教えて下さい。
森本 以前は介護職員として特別養護老人ホームやデイサービスなどで勤務し、その後は一般企業で事務職をしていましたが、今は起業に向けての準備中で働いていません。
――なぜ、起業を思い立ったのですか。
森本 私は専門学校で介護福祉士の資格を、その後大学で社会福祉士の資格をとって介護の道に進みました。しかし、「入居者全員の幸せを同時にかなえよう」という想いが強くあり過ぎて、無理を重ねた結果、精神的にしんどい状況になってしまいました。
 そこで「もっとプレッシャーがかからない仕事を」と考えて別業界の一般事務職に転職しました。しかし「どうせ汗を流すなら、自分が好きで自分のためになることで汗を流そう」との想いが強くなり、起業を目指し2020年秋に退職をしました。その1年前に結婚をしており、しばらくは仕事をしなくても収入の面では心配ないことも退職の後押しになりました。
――どのような仕事での起業を考えているのですか。
森本 私は中学・高校の6年間ブラスバンド部に所属し打楽器を演奏してきました。卒業後は友人・知人が立ち上げたバンド・楽団に参加するなどセミプロの打楽器奏者として活動してきました。起業に際してはこの経験を活かすことを第一に考えました。私が退職をしたのは新型コロナウイスル感染症感染拡大の最中であり、友人・知人を含め多くの音楽家が活動の場を奪われている状況でした。事業内容としては、私が馴染のある介護業界と音楽家を結びつけることを考えています。「morimoto音楽堂」という屋号はすでに決めています。なによりも私自身が介護職時代に勤務先へ訪問演奏に行ったり、音楽レクリエーションをしたりと、非常に楽しい経験をしました。その高揚感やワクワクをまた体験したいという思いも強くあります。
 訪問演奏をする場合、マネジャーがいないアマチュアバンド・楽団はメンバー全員の都合の確認、出張先との打ち合わせなどを仕事の合間を縫ってしなくてはならず大変な手間がかかります。また高齢者施設側は、どこにどのような音楽家がいるのか知る方法がありません。そこで私がマネジャー的な立場となり、高齢者施設への演奏会実施の提案、音楽家との各種連絡・調整などを行います。もちろん私自身も演奏家として演奏を行います。また3年程まえから元音楽大学教授の元で編曲を専門に学んできたほか、先日は音楽レクリエーションに関する民間資格も取得しました。高齢者施設に音楽レクリエーションの企画・運営に関するコンサルタントとして関与することも考えています。
 

少資金で小回りが利く経営に

――起業に際して重視したことは何でしょうか。
森本 少ない資金で開業することです。実際、現在までにかかった費用はパソコン・名刺代など20万円程度です。今後パンフレット制作、担当する音楽家の宣伝素材、例えばYouTube動画の作成などを行うにしても、それほどの費用はかからないでしょう。
もちろん失敗するつもりはありませんが、仮に撤退や大幅な路線変更をしなくてはならない場合に、多額の初期投資を行っていると「せっかく費用を投じたのだから」という考えが邪魔をして判断を誤らせる可能性があります。
――最後に、起業に向けて悩んでいることはありますか。
森本 今はまだ専業主婦ですので人脈が少ないことです。特に現職の経営者、起業経験者などと知り合う機会が殆どありません。そうした人たちとの出会い・交流の場があればと思います。ただし、当面は個人事業・大阪限定と一人で出来る範囲での活動ですので、できれば大企業・老舗企業の経営者ではなく、私と同じような立場の人たちと知り合えて、課題やその解決方法などについて共有できる機会があれば助かります。