これまで、働き方の多様化が進む中で、シェアオフィスの活用が注目されていること、シェアオフィスで具体的にどのような働き方が実現できるのか、などといったことをご説明してきました。では、沢山あるシェアオフィスの中から自分にあった物件を選ぶには、どのような点に注意が必要なのでしょうか?
 

頻繁に利用するなら都心型が便利

シェアオフィスの場合は「どのような目的で利用するのか」で選び方が異なってきます。
例えば、立地ですが、「将来の起業に向けての勉強や、副業・兼業のための場として毎日帰宅途中に使いたい」といった場合には、日常の通勤ルート上に無いと不便です。また、「外回り中に書類をまとめたりするために使いたい」といった場合には得意先など自分がよく立ち寄る場所に借りた方が使い勝手がいいでしょう。自分以外の社員・スタッフが毎日通勤しなくてはならない場合には交通至便な都市中心部の方が便利ですし、スタッフ募集の面でも有利にはたらくでしょう。また、住所利用や法人・商業登記が可能なシェアオフィスであれば、世間的に「一流」とされるビジネス街にある方が、対外的な信用力のアップにつながります。
一方で「休日に、本業とは全く関係のない副業の場として使いたい」などといった場合は、地方の温泉旅館のコワーキングプランなど、日常の仕事・生活の場とは全く無関係のところを使用した方が、気持ちや思考を切り替えられるというメリットがあります。
 

自身のステップアップに対応できるか

費用についても同様に、利用目的が大きく影響します。例えば、シェアオフィスの月額利用料が2万円だとしましょう。平日のみ利用するとしたら1日あたり1000円の計算です。使用目的が「外回り中に書類をまとめたりするために短時間立ち寄る」のであれば1杯500円のコーヒー代を払ってカフェに行った方が費用面では得になります。しかし「日頃から必ず1日に複数回カフェに入っている」ならばシェアオフィスを借りた方が費用面でのメリットがあります。また、ドロップイン方式での利用が可能なシェアオフィスの場合には、時間単位の料金とカフェでのコーヒー代との比較になります。このように「自分の利用スタイルに合った料金体系になっているか」もシェアオフィス選びのポイントになります。
 ただし、「自分の利用スタイル」は変化していくことに注意が必要です。例えば、①会社員が将来の起業に向けた勉強を開始→②会社員をしながら副業として個人事業をスタート→③会社員を辞め個人事業主として独立→④法人化→⑤事業が軌道に乗り従業員を雇用するようになる、といった具合にステップアップをしていった場合、それに伴ってオフィスに必要とされるスペース・機能も変化していきます。もし、利用しているシェアオフィスがコワーキングスペースとしての機能しか有していない場合はどうでしょうか。そのステップアップに対応できず、退会して別のシェアオフィスを借りなくてはなりません。それは費用面でも時間面でも多くの無駄が生じます。そうした点を考えると、様々なステップに対応できる機能を有したシェアオフィスの方が使い勝手がいいといえるでしょう。
また、そうした様々な機能を持つには相応の規模・スペースが必要です。小さなビルに入っているシェアオフィスよりは、大きなビルに入っているシェアオフィスの方が利用者のニーズの変化への対応力は高いと言えると思います。
 

「単なる仕事の場」以上の機能があるか

 最後に、「利用者間の交流機会の有無」です。単にデスクで黙々とパソコンを打つだけであれば、カフェなどで仕事をするのと何も変わりません。シェアオフィスを利用する動機のひとつに「同じような立場・目標の人と繋がりたい」「ビジネスチャンスを拡大させたい」など人脈を増やすことがあります。交流会やセミナーの開催など、運営者側で会員の事業・目標をバックアップしてくれる体制がどれだけ整っているかもシェアオフィス選びの上では重要なポイントになります。
 
 いずれにせよ、シェアオフィスを選ぶ場合は「どのような目的で利用するのか」「自分は何を目標としているのか」という明確なビジョンがあることが重要です。単純に「費用が安い」など表面的な条件で選ぶとミスマッチに繋がりかねませんので注意が必要です。