テロ・災害下などでも重要業務の継続を目指す

 皆さんは「BCP」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。事業継続計画(Business Continuity Plan)の頭文字で、企業がテロや災害、システム障害や不祥事といった危機的状況下に置かれた場合でも、重要業務が継続できる方策を用意し、生き延びるための戦略を記述した計画書のことです。介護サービス事業所では2024年度までの導入が義務化されるなど、近年多くの企業で策定への関心が高まっています。
 もっともBCPの考え方は以前からありました。例えば、病院では自家発電装置を備え、停電が起こっても医療機器が停止しない体制を整えて、患者の命を守ってきました。
 「コンピューター2000年問題」を覚えている方も多いと思います。結果的には全くと言っていいほど問題は発生しませんでしたが、「コンビューターが誤作動・停止する可能性がある」と騒がれ、多くの企業が対策を講じました。これも今でいうところのBCPです。
 BCPに対する意識を大きく向上させたのが2011年の東日本大震災です。例えば介護施設では災害に備えて3日分の食糧を備蓄すること義務づけられていましたが、実際には救助・支援の手が届かない状態が1週間以上続きました。「災害時の対策マニュアルは策定していたが全く役に立たなかった。今回の経験をもとに全面改訂する」と多くの介護事業が口にしていました。
 日本で多くの企業が集積するのは首都圏と関西圏ですが、それぞれ首都圏直下型地震、南海トラフ地震の発生の可能性が指摘されています。多くの企業にとってBCPの策定は喫緊の課題となっています。
 

出勤不能時にはコワーキングスペースで執務

 そして、このBCP策定の上で、シェアオフィス・コワーキングスペースの活用が注目されています。
 10月7日夜、首都圏で最大震度5強を観測する地震が発生しました。翌朝、交通機関のダイヤは大きく乱れて多くの人が出勤できず、半日程度業務がまともに行えない企業が続出しました。
 こうした事態を防ぐ方策として、従業員が徒歩や自転車、バイクなどで通える範囲内にシェアオフィス・コワーキングスペースを予め確保しておくことが考えられます。「災害や交通トラブルなどで出社が困難な場合には、最寄りのシェアオフィス・コワーキングスペースで執務する」ことを社のルールとして定めておけば、そのシェアルーム・コワーキングスペース自体が休業しない限り、支障なく業務を行うことができます。
 

感染症対策のためにオフィス機能を分散

 また、当初BCPは主に災害発生を想定した対策の構築が目的でしたが、2020年以降は新型コロナウイルス感染症が世界規模で拡大したこともあり、感染症対策も視野に入れたものが求められています。ここでもシェアオフィス・コワーキングスペースの活用が重要になります。
 例えば、大勢の社員が一つのオフィス内で業務していると、1人が感染することで全員が感染するリスクにさらされます。場合によってはオフィス閉鎖などの事態も考えられます。これに対し、シェアオフィス・コワーキングスペースを活用して複数の拠点に分散して勤務していれば、万一感染者が発生しても感染リスクは一部の社員に限定されます。また、感染者が出たオフィスの社員で、自身は感染しておらず濃厚接触者でもない人は、オフィス閉鎖となっている間は緊急避難的にシェアオフィス・コワーキングスペースで執務することで、業務の停滞を防ぐことが可能です。
 こうした活用の場合は、感染症が蔓延してない時期は、本社オフィスとシェアオフィス・コワーキングスペースは互いに行き来することもありますから、近い場所にある方が便利です。現在、自身がオフィスを構えているビル内にシェアオフィス・コワーキングスペースがある場合は、そこを利用することが理想的です。逆に、現在シェアオフィス・コワーキングスペースがあるビルにオフィスを移転させるという方法も考えられます。シェアオフィス・コワーキングスペースの中には、同じビルに入居する企業の社員に対しては無料や割引などの特別プランを用意しているところもありますので、経済的なメリットも大きくなります。