テスラの時価総額はトヨタの4倍
新年明けましておめでとうございます。2022年はビジネスパーソンの皆さんにとってどのような年になるのでしょうか。「新型コロナウイルス感染症の状況」「株価や為替の動向」「原油や各種原材料の価格」など企業を取り巻く環境には不安定な要素が多く、大海原の中で自分の船の舵をどの方向に向けるのか、難しい判断を迫られることも多いのではないかと思います。そうした中で、羅針盤の一つとしてあげられるのがSDGsではないでしょうか。SDGsは2015年の国連総会で採択されましたが、当初は日本では「いわゆる『意識の高い企業や人』だけが口にする、どこか遠い話」という感がありました。しかし、一昨年ほど前から急速に認知度が上昇し、熱心に取り組む企業や人が増えています。
SDGsには具体的な17の目標が設定されていますが、その中で最も取り組みやすいのが、⑫の「持続可能な生産消費形態を確保する」と、⑬の「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」です。つまり「資源を節約したり、CO₂排出を抑えたりといった生活を実践し、地球環境を守る」ことです。日本でもレジ袋が有料になったり、飲食店のストローが紙製になったり、クレジットカード会社からの毎月の利用明細通知が電子化されたりと、私たちの身近なところでも、この考えに基づく変化が次々に起こっています。
昨年10月末、米国の電気自動車メーカー「テスラ」の株式時価総額が1兆ドルを越えました。これは自動車業界第2位のトヨタ自動車の時価総額の4倍以上です。ちなみにテスラがトヨタの時価総額に追いついたのは2020年7月のこと。1年強でここまで大きな差がついています。このように、環境への取り組みは、株価、新規の取引、資金調達、採用など企業活動の様々な面に影響を与えるまでになっています。
オフィス移転は環境負荷が大きい
では、企業として、どのような行動がSDGs⑫⑬の実践につながるのでしょうか。様々な企業活動の中から「オフィスを借りる」という行為を例にしてみてみましょう。通常、借りていたオフィスの退居時には、原状回復工事が必要です。その際、内装材や什器・備品など大量の不要物が発生します。中には中古・リサイクル市場に回せるものもありますが、大半はゴミとなります。そして内装工事は移転先でも必要です。退去時に比べれば少ないですゴミが出ます。また、そもそもの考えとして、こうした内装材や什器・備品の製造、運搬や、設置のための作業を行うこと自体がCO₂排出につながり、SDGsに反していると言えます。
つまり、SDGsの観点から言えば、「オフィスは移転しない方がいい」という結論になります。もちろん企業の成長過程の中で、これまでよりも広く快適なスペースや高機能なオフィスが必要になるのは自然なことです。しかし、その度に大量の廃棄物やCO₂を排出することに対しては、世間の見る目が相当に厳しくなっているのが現状です。
シェアオフィスは原状回復工事不要
こうした中で、既に完成しているオフィスを複数企業でシェアすることが環境保護の面から注目されています。シェアオフィス・コワーキングスペースであれば、入退居に際して、工事をしたり、什器備品を新たに購入・破棄したりする必要性がありません。複合機や会議室を複数企業で共有することで、結果的に各社が個別に用意するよりも少ないスペースで執務環境を整えることができます。また、従業員増加や業態変化などで必要なオフィスペースが増えた場合でも、調整が可能です。結果的に、成長企業であってもオフィス移転の回数を減らすことができ、環境に対する負荷を軽減できるのですもちろん、現在入居しているビルのセキュリティ性、ネット環境、耐震性などの問題で移転をしなくてはならないケースも多いでしょう。しかし、そうした場合でも「自前オフィス+シェアオフィス・コワーキングスペースの活用」などで、環境負荷を可能な限り減らす借り方をすることが、SDGsが必須とされる今後の企業にとって重要な考え方になるのではないでしょうか。