起業や副業・社内起業など、新しい働き方をしている人たちの実例を紹介する企画の第3回。まつげエクステサロン経営など4つの仕事と育児を同時にこなす、さえきようこさん(37歳)にインタビューしてみました。

26歳で自らシングルマザーの道へ

――今の仕事を教えて下さい。

さえき 2021年8月にまつげエクステサロンを開業しました。このほかフリーランスで写真撮影、チラシやパンフレットなど販促物のデザインを行っています。またパートタイマーで訪問美容師として働いています。収入ベースでは、サロンが70%、撮影とデザイナーが合計20%、訪問美容10%といったところです。
――なぜ、そのように様々な仕事をするようになったのですか。
さえき 以前は美容学校に通いながら美容院で働いていました。26歳のとき、恋人との間に子供ができたのですが、妊娠が判明した瞬間に「彼が夫、父親だと未来が不安」と感じてしまい、シングルマザーの道を選びました。出産後3年間はそれまでの蓄えと実家の援助で育児に専念しました。29歳のときに、友人が働いていたまつげエクステサロンでパートとして働き始めたのが、今のキャリアのスタートです。

――他の仕事については。

さえき 32歳のときに介護の学校に通い始めました。子どもに迷惑かけず生涯働ける仕事であることに加え、親の老後を考えたときに役立つだろう、と考えました。学校で介護福祉士の資格をとり、就職も決まっていたのですがケガをしてしまい内定取消になりました。そこで介護福祉士と美容師の資格を活かすため、後々に考えていた訪問美容師の仕事を始め、まつげエクステも他のサロンでパートとして働くことにしました。
デザイナーについては介護学校時代に知り合った方から依頼を受けたのがきっかけです。未経験の私が依頼を頂けたことに、使命感、高揚感が湧いたことを覚えています。写真は趣味で少々かじっており、やはり介護学校時代に知り合った方のイベントなどの撮影をボランティアで行っていました。どちらも色々な方の繋がりのおかげで依頼が増え、有償で請け負えるようになりました。

――サロンを自分で開業したきっかけは。

さえき 店長として会社に貢献していくつもりでしたが、コロナの影響もありこれまでよりも悪い雇用条件を求められたため「それならば自分でできないか?」と思いました。周囲にパラキャリアや若い起業家、個人事業主が多く、日頃から色々と刺激は受けていましたが、私自身は特に「将来は起業」という明確な目標を持っていたわけではありません。

最優先は「家事・育児」

――4つの仕事に子育て、これを同時にこなしていくコツは。

さえき 私の中では家事・育児が最優先です。まずその時間を確保して、それ以外の時間の中で4つの仕事をいかにうまく組みあわせるかがポイントです。サロンは完全予約制なので、子どもの用事や撮影の仕事が入ったときは予約を受けないこともできますし、予約の合間にデザイナーの仕事もできます。一つの場所に一定時間拘束される仕事だと、こうした働き方はできません。自分の都合でスケジュールを組める仕事という特性を最大限に活かしています。

――仕事をしていく上で心がけていることは何でしょうか。

さえき 自分が楽しむことです。趣味やサークルのような「ありのまま」の関係から構築した人脈を大切にしたいです。そこから、学びや繋がりが生まれ、「できること・やってみたいこと」がいつのまにか「仕事」となり、また繋がります。自分が持っているもので最大限、最善を尽くしたいと思う人が増えていく。それが介護学校時代の人脈です。
 次に「やる」か「やらない」か迷ったら「やる」を選びます。どんな経験でも必ず自分の糧になります。また「やる」という判断が正しいかどうかは、やりながら検証できます。
 そして「時間がない」を言い訳にしません。時間は工夫次第でいくらでも作れます。もし本当に時間が作れないなら、それは「本気で取り組んでいない」ことだと考えています。

――今後、目指す方向性は。

さえき サロンは、いずれ人を雇って現場を任せられる環境にして、撮影とデザイナーを柱にしていければと思います。この2つは人の繋がりを通してオファーが頂ける仕事なのでモチベーションもあがります。また、こうしたクリエイティブ系の仕事については、未経験のジャンルでも機会があれば新規で手がけていきたいと考えています。