温度・湿度調整難しく、パフォーマンス低下
大手空調機器メーカのダイキン工業が11月8日に面白い調査結果を発表しました。東京在住・在勤で、2021年10月時点で週に2回以上テレワークをしている20~50代の会社員400人を対象に「テレワークなどで在宅時間が増える中、自宅の空気に閉塞感・密閉感や、よどみのようなものを感じることがあるか」と聞いたところ、68.0%が「感じる」と回答しました。また、テレワーク中に「快適な温度の維持・調整に課題を感じる」人は68.6%、「快適な湿度の維持・調整に課題を感じる」という人は62.5%いました。そして「こうした室内空気の状況がテレワークのパフォーマンスに影響すると思うか」では、実に92.5%が「集中力低下などの面で影響する」と回答しています。
テレワークは通勤時間が不要、雑務から解放される、苦手な人と顔を合わせなくていいなど、従業員にとって様々なメリットがあります。しかし、本来、家は生活の場であり、仕事の場ではありません。中にいる人が最高のパフォーマンスを発揮できるよう様々な環境が整えられたオフィスに比べて、執務環境として劣る面が多いことは否めません。これはカフェやホテルなどでも同じことが言えます。
若い世代ほど閉塞感実感
また「自宅の空気に閉塞感・密閉感・よどみのようなものを感じる」と回答した人の割合は年齢が低くなるほど多くなります。これについてダイキン工業では「若い世代はワンルームなど限られた居住空間の中で1人の時間を過ごすことが多くなり、精神的な閉塞感も相まって、空気環境の課題を感じやすくなっているのかもしれない」とコメントしています。このように、狭い自宅でのテレワークは、精神的なストレスの増加、パフォーマンス低下などのデメリットがあります。今や従業員の「心の健康」を保つことは企業にとって必須の取り組みです。この点を考えると、自宅で長時間のテレワークを強いることは、あまり好ましいとはいえません。その点、コワーキングスペース・シェアオフォスは自宅のような閉塞感を感じることも無く、温度・湿度をはじめ照明・音楽・芳香などの各種環境も快適に調整されています。さらに、自宅からそこに通うことで、外の空気を吸い、気分転換ができるというメリットも生じます。心の健康維持・パフォーマンス向上の両方の側面からみて、理想的なテレワーク環境といえます。
新型コロナウイルス感染症の新規陽性者が全国的に減少する中で、コロナ禍以前の就業形態に戻す動きが強まっています。しかし、今後いわゆる「第6波」が来る可能性があることや、従業員自身の希望や都合もあることを考えると、現時点で「テレワーク完全廃止」に踏み切るのは現実的とはいえません。必要に応じてテレワークを継続し、かつ従業員の心の健康、パフォーマンスの維持を図るには「テレワーク環境の重要性」について企業側がしっかり認識し、必要な措置を講じていく必要があるでしょう。
環境改善のための自己負担重く
また、このダイキン工業の調査では、79.1%の人が「自宅でのテレワーク時の空気環境改善のために費用をかけた」と回答しています。費用については「5万円以上」が15.8%、3万円以上~5万円未満」が14.5%と、かなりの額の投資を行っています。コロナ禍でテレワークがスタートした当初「自宅でテレワークができるための環境を整える費用を従業員が負担するのはおかしいのではないか」という意見が聞かれました。
これについては、パソコンやネット関連の設備などは「テレワークに必要か否か」を企業側で明確に判断できるため、必要に応じて企業側で準備する、従業員が購入した際の費用を補助するなどの対応が可能です。それに対して「閉塞感」「温度・湿度」などについては個人的な感覚差もあり、それらを整えるための設備の必要性の判断は困難です。結果的にこれらの投資については、従業員の自己負担にならざるを得ません。これが結果として従業員の不満に、ひいては離職につながる可能性があります。こうしたリスクを避けるためにも「自宅以外でのテレワークをいかに推進していくか」が今後企業にとって求められる姿勢と言えそうです。