「カフェで仕事をする」自体はコロナ以前より

 日本で新型コロナウイルス感染症の陽性者が確認されて丸2年が過ぎました。この間に、リモートワーク・テレワークが新しい働き方としてすっかり定着しました。しかし、コロナ感染が広まった当初と現在とでは、テレワークでの働き方や、テレワークに求められる環境も大きく変化しています。
 コロナが広まった当初、テレワークの場所としてはカフェ・ファミリーレストラン・インターネットカフェなどが一般的でした。もっとも、ノートパソコン1台でこれらの場所で仕事をすることはコロナ以前にも見られ、そうした人たちは「ノマドワーカー」と呼ばれていました。その流れからも、コロナ禍が始まったときに、ネット環境などの面から自宅で働くことが難しい人たちがカフェなどに足を運んだのはごく自然なことといえます。
 しかし、同じ「カフェで仕事をする」でも、コロナ以前と以降では大きな違いがあります。
 コロナ以前にカフェで仕事をしていたのは、士業やコンサルタント、クリエイターなど「個人である程度仕事が完結する人」が主でした。もちろん営業職の会社員など「組織として働く人」もいましたが、外回り中の空き時間に立ち寄るなどのケースが大半で、メールのチェックや書類作成など一人で黙々とできる「仕事のうちの一部」をカフェで行っていました。これでしたら他の客の存在も大した支障にはなりませんし、食事をしながらの仕事も可能でしたから、多少長居をしても店に咎められることはありませんでした。
 

オンライン会議に他の客から苦情も

 それに対し、コロナ禍後は、内勤業務の会社員など、カフェで仕事をする人が多様化しました。テレワークの内容にも、オンライン会議・商談・面接などが加わりました。そのことにより様々な問題が生じるようになりました。
まずは「声」です。オンライン会議や商談時に先方の声は周囲に聞こえないようにできても、本人が話す声は消しようがありません。店内の他の客からすれば、オンライン会議をされるのは、電車の中で長々と携帯電話で話しているのを聞かされるのと変わりません。当然「迷惑」「耳障り」といった苦情になります。
次に「情報漏洩」です。社内会議や商談では、当事者以外には秘密の情報が飛び交うこともあります。他人に聞かれる可能性があるカフェでそれら行うことは情報管理の点で問題があります。
また「周囲の声」の問題もあります。カフェにいる他の客の声や姿が画面の向こうにいる人にも伝わってしまい、会議や商談がやりにくくなることもあります。しかし、他の客に「オンライン会議中なので静かにして欲しい」と言うわけもいきません。
最後に「店側の迷惑」です。オンライン会議の最中に食事をするわけにもいきませんから、コーヒー1杯で1時間・2時間と居座ることになります。これでは回転率が下がり、カフェには大きなダメージです。結果的にカフェの中には長時間利用者に退店を促すところが出てきています。今や、テレワーカーはカフェにとって「招かれざる客」とも言える状況です。
 

高まる「個室スペース」のニーズ

このように、業務をカフェなどの公共空間で行うことは様々な面で不都合があります。当初は「テレワークは一時的な対応」と考え、多少の不都合は容認してきた企業も、コロナ禍が長期化し、テレワークを会社の仕組みの中にしっかり組み込む必要性が出てきた中で「社員にどこでテレワークをさせるか」を考えなくてはいけなくなっています。
特に、会議・商談・面接のように、これまで当事者がクローズの場で行ってきた業務をカフェなどの公共の場で行うことは、リスクマネジメントの観点からも問題です。こうした中で企業が求めているのが「防音性に優れた個室」です。コワーキングスペースの中にも個室式のフォンブースを設けるところが増えていますし、大型オフィスビルの中には、共用部にテナント企業の社員向けフォンブースを設けるところが出てきています。
テレワークをする側も、させる企業側も仕事の内容に応じて、テレワークの場所を正しく選択していく必要があるしょう。