毎年4月は新たな法律の施行など、社会の仕組み・制度が大きく変わる時期です。今回は、2022年4月から新たに始まった仕組み・制度などの中から「企業経営」に関わると思われるものをいくつか紹介します。
 

成人年齢を18歳に引き下げ

 まず、成人年齢が満20歳から18歳に引き下げとなりました。これにより、満18歳以上であれば保護者の同意・承認を得ずに契約などの商取引をすることが可能となりました。自動車教習所、賃貸住宅など18歳(高校卒業)を機に購入・利用することが多い商品やサービスを提供している事業者にとっては、ビジネスチャンスの拡大や契約時の手続きの簡略化などといったメリットが生じます。
一方で、これまで自分自身の判断で商取引をする機会が少なかった人たちを対象にビジネスをすることになりますので、消費者側の理解・知識の不足によるトラブルの増加も考えられます。企業側には従来以上に懇切丁寧な説明をするなど消費者保護の姿勢が求められると言えるでしょう。
 

会計関連書類を電子帳簿で保管可能に

「改正電子帳簿保存法」が施行されました。事業者は請求書や領収書、契約書や発注書などといった会計に関する各種書類を、自由にいつでも自身の判断で、これまでのような紙ではなくサーバーやクラウド上、パソコン上などで「電子帳簿」として保管することが可能になりました。書類が改ざんされていないことを証明するタイムスタンプの条件も大幅に緩和されました。
これにより、企業には①書類保管スペースが不要となり、従来よりも少ないスペースで業務が可能になるため、オフィス賃料が削減できる、②各種書類がサーバーやクラウド上に保存され社員など関係者が見られる状態になっていれば、書類の確認や記入などのための出社が不要となり、テレワーク・リモートワークが進む、といったメリットが生じます。またペーパーレスが進みますからSDGsの観点からも好ましいことといえるでしょう。
しかし、その一方で、「一度電子帳簿を導入したら、それ以降は紙のみで帳簿を保存することは違反となる」「保存したデータは税務署などの求めに応じていつでもダウンロードできる環境にしておく必要がある」などといった点については注意が必要です。
改正電子帳簿保存法の仕組みは複雑ですので、実際に電子帳簿を導入する際には税理士などの専門家に相談することをお勧めします。
 

「パワハラ防止法」 中小企業も対象に

 改正労働施策総合推進法、いわゆる「パワハラ防止法」の対象に中小企業が加わりました。全ての事業者に対して、①社としてのパワハラに関する方針の明示、及びその周知・徹底、②パワハラの相談・苦情等に応じる体制の構築、③パワハラが発生した場合の適切な対応、が義務化されます。また、パワハラを相談した人やパワハラ行為をした人のプライバシーの保護なども求められます。
 パワハラを行っていた上司・指導者的立場にある人が、それを指摘されたときに、よく「指導の一環だった」「相手も理解・納得している」「自分たちもこうして鍛えられてきた」などとコメントすることからもわかるように、パワハラの発生は、社風や指導者世代に意識に起因することが少なくありません。特に営業会社では「社員にハッパをかける」ことを目的に、パワハラ行為が横行しているケースも見受けられます。今は、そうした行為はSNSなどですぐに社会に拡散され、企業にとっては大きなダメージとなります。それを防ぐためにも、社会保険労務士などプロのサポートを受けて適切な対応をすることが求められます。